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天使か悪魔か

リアルババアあしゅのいらん事言いブログです。 昔の記事は http://maho.lomo.jp/nashural/ に。

亡き人 1

あれっ・・・?
 
あたりをキョロキョロと見回す。
うっわー、真っ暗。
私、また夜まで昼寝しちゃった。
ああ・・・、空しい・・・。
 
にしても、夜ってこんなに真っ暗じゃないよね?
電気電気、あ、あれっっっ???
スイッチ、どこにあったっけ?
え? ちょっ、私、ついでに記憶もない?
 
え? え? って事は、もしかしてここ病室か何か?
私、記憶喪失とかで入院させられてんの?
 
 
グチャグチャになった頭を抱えながら
あたりを見回してみるが、明かりひとつない。
 
・・・隔離病棟って言うより、刑務所の懲罰房・・・?
まさか私、犯罪犯して服役してるとか?
 
そう思った瞬間、激しい目まいがして、うずくまった。
 
 
ふと気が付くと、部屋の中にいた。
あ、夢だったー、良かったーーー。
 
ホッとしたのもつかの間、背後で人の気配がする。
振り向くと、こちらを見て驚いた表情の若い男性が座っている。
 
「あなた、どっから・・・!」
そう言い掛けてよく見ると
ここ、私の部屋じゃない!
どっから来たのは私の方じゃんよー!
 
慌てて、青年に頭を下げた。
「えっと、何でここにいるのか、よくわからないんですけど
 人様のお宅に勝手に上がりこんでいたようで
 ほんと、申し訳ございません。
 すぐ出て行きますんで。」
 
相変わらずビックリ顔の男性だが、とにかく勢いでごまかして
おおごとにされる前に、ここを脱出せねば
そう思い、ドアに向かおうとした瞬間、青年に呼び止められた。
 
 
「あ、あの、待ってください!」
あいたー、正気に戻られたーっ。
 
ガックリしたが、何とか言い逃れをしようと奮闘する。
「ほんとすいません、ほんとすいません
 明らかに怪しいでしょうけど、ほんと何かの間違いですんで
 何とぞご容赦ください、出来れば通報とか勘弁してくださいーーー!」
 
両手を合わせて平に頼み込んでいたら、青年が呆れ顔になった。
「・・・驚いた・・・。」
 
ええ、ええ、そうでしょうとも。
こんな夜中に、得体の知れない女が部屋に上がりこんでさ。
 
何でこうなったのか、私にもよくわからないんだけど
とにかくこの状況では、私側に非があるのは明白。
私、マジ犯罪者になっちゃうじゃんー。
どうやって、この窮地を切り抜けたら良いんやらーーー。
 
 
頭をフル回転させて、算段していると青年が言った。
「あの、あなた、死んでますよね・・・?」
 
「はあああああ?」
ああ、しもうた、気違いはこいつの方だったか、と激しく脱力する。
 
「うーん、自覚ないんですかー。
 まあ、だからこそ迷っているんでしょうけどね。
 そこの水、取ってくれます?」
「は? これですか?」
 
掴もうとした自分の手が、ペットボトルをすり抜ける。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!!!
 超能力ーーーーーーーーーーっっっ!!!」
 
「いや、そっちの超常現象じゃなくて、心霊の方ですって。」
青年が立ち上がって近付き、ペットボトルを手にした。
 
 
「・・・うそ・・・、私、霊?」
「はい、霊です。」
「じゃ、あなた見えるヒト?」
「はい、ぼく見えるんです。」
 
「へえ、すっごーい、霊感あるんだー!
 私、そういうの全然ないから、興味あるんですよねー。
 どんな感じで見えるんですかあ?」
 
ちょっと呆れる青年。
「・・・あなたにも、もう見えてるんじゃないですか?
 “そっちの世界” に入ってるんだから。」
 
「ええー、私そういうのほんとダメで・・・」
言いながら、青年が指差した方を見たら
血まみれの女性が、部屋の隅に浮かんでいる。
 
 
「いやあああああああああああああっ
 マジ恐ーーーーーーーー!!!
 やめてーーーーーーーーっっっ!!!」
 
叫んだ途端、血まみれ女性がフッと消えた。
 
 
 続く。
 
 
関連記事: 亡き人 2 10.11.19
      
      カテゴリー 小説

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

亡き人 2

「ああ・・・、やっぱりだ。」
感心する青年。
 
「うっわー、すっげえスプラッタでしたねー。
 私、霊、初めて見たから、すんげえビビりましたよー。
 皆あんなんなんですかー?」
 
その能天気さに、とまどう青年。
「・・・ほんと何か色々と驚くなあ。
 今まで来てた霊、全部恐いのばかりだったのに
 あなたみたいな霊、初めてですよ。」
 
「だから、私まで霊扱いにしないで・・・、ん?」
再び青年が指差すので、自分の足元を見る。
「ほらあー、足、あるじゃん、・・・って
 ああっ、浮いてるーーーーーーーーーっっっ!」
 
 
あまりのショックに、フラフラとよろけたら
頭が床をすりぬけて、下の階の部屋の天井から突き出てしまった。
「うわっ!」
慌てて戻ってくる。
 
「下の階、カップ麺の容器とかすげえ散らかってたよー!
 汚部屋! またまた初めて見たけど、あれ、汚部屋!
 下、どんな人が住んでるの?
 って、そんな事はどうでも良くて、私、倒れる事も出来ないのか・・・。
 うそ・・・、ほんとに霊になっちゃってるんだ・・・。」
 
 
ドロドロと陰気臭く落ち込んだが、さっさと立ち直る。
「でも、まあなっちゃったもんはしょうがないよね。
 えーと、どうやったら成仏できるんかな?」
 
「ぼくはただ見えるだけなんで、それはわからないんです。
 すみません・・・。」
 
「あっ、いやいや、あなたのせいじゃないから気にしないで。
 ちょっと浮遊しつつ、何とか模索してみるわ。
 と言っても、これからどこに行けば良いんやら・・・。
 もしかして、世界の観光地とか行けるんかな?
 だったら、まずはちょっくらアルゼンチンに行ってみる。
 お騒がせしてすいませんでしたー。
 じゃ、そういうこってー。」
 
 
「あっ、ちょ・・・」
男性が止める間もなく、壁をすり抜け出て行った。
 
と思ったら、すぐに舞い戻ってきた。
「・・・何か、このあたりから先に行けないみたいなんだけどー。」
「そうなんですか。
 何となくそういう気はしてたんですよね。」
「だよねー、好きなとこに行けるんなら、霊、ウハウハだもんねー。」
 
 
「はああ・・・、私、ここに地縛しちゃってるんかもー。」
落ち込む霊に、青年が申し出をした。
「あのですね、もし良かったらここにいてくれませんか?」
「へ? それはありがたいけど、でも何で?」
 
「ぼく、何か憑いてこられやすいらしくて
 しょっちゅう恐い霊が来るんですよ。
 でもあなたが来たら、さっきの霊、いなくなっちゃったでしょ?
 あなたは恐くないんで、ここにいて守ってくれたらな、と。」
 
「ああ、なるほど、番人ならず番霊ってわけね。
 でも私にそんな力があるんかなあ?」
 
「ぼく、見えると言ってもそんなにはっきりじゃないんですよ。
 でもあなたの事ははっきり見えるし、会話も出来る。
 凄く強い霊じゃないかと思うんです。」
 
「うーん、もしかしたら私たち、何か因縁があるんかも?
 守護霊だったりしてー。」
「それはわかりませんけど・・・。」
ヘラヘラ笑う霊に、少し嫌がる青年。
 
 
「私もどうしたら良いか、よくわかんないしなあ・・・。」
考え込む霊だったが、答はひとつしかない。
 
「うん、成仏できるまで、ここでお世話になるよ。」
「ほんとですか? じゃ、よろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ。」
 
お互いに頭を下げ合うふたりであった。
 
 
 続く。
 
 
関連記事: 亡き人 1 10.11.17
      亡き人 3 10.11.24
            
      カテゴリー 小説

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

亡き人 3

「あ、でもさ、見知らぬ男女が同じ部屋で暮らす、って
 色々とマズいんじゃないの?」
「人間と霊だから大丈夫じゃないですか?」
 
「いや、私は良いけど、ほら、若い男の子だから
 ご自愛とかそこらへんとか。」
「余計な心配はしなくて良いです!」
 
怒り出す青年に、霊がつぶやく。
「昨今流行りの “草食系男子” ってやつか、こいつは。」
 
 
「じゃ、あらためて自己紹介しますけど
 ぼくは長野太郎、大学1年生です。」
 
聞いた途端、笑い転げる霊。
「ご、ごめん、でも、長野県の提出書類記入例とかに
 絶対に使われていると思う。
 長野太郎 長野花子 とかー。」
 
「・・・良いですよ・・・、大抵そういう反応をされますから・・・。
 言っときますが、長野出身じゃないですからね。」
「長男でしょ?」
「はい。」
「ヘンな感性の親を持つと苦労だよねー。」
「・・・・・。」
 
 
「で、あなたは?」
太郎の質問に、霊が軽く明るく答える。
「はーい、なーんも覚えていませーん。」
 
「自分の名前もですか?」
「うん。」
「じゃあ、何と呼べば良いんでしょうか?」
「うーん、霊だから “霊” で良いよー。」
 
ノンキにヘラヘラ答える霊に、太郎が怒る。
「良いわけないでしょ!
 それだと他の霊と区別が出来ないじゃないですか。
 何かもっと良い呼び名を考えないと・・・。」
 
 
めんどくさいヤツだなあ、と思ったが
太郎の言う事ももっともなので、テキトーに考えた。
 
「んじゃさ、霊で零でゼロ、ってのは?
 何かそういうゲームがあったと思うんだけど。」
「ゲーム、ですか?
 そんなに古い霊じゃなさそうですね。」
「そうなんかな?」
 
「ええ、言葉遣いを聞いてても、そこまで世代の差を感じないと言うか
 同じ時代を生きてた気がしますよ。
 にしても、何だかあっさりしてますよね?
 その性格で何で成仏しないんでしょうね?
 心残りとか、思い当たる事がありますか?」
 
ちょっと考え込んでみたが、相変わらず何も思い出せない。
「それがまったくないんだよねー。」
「そうなんですか・・・。」
 
 
考え込む太郎に、ふとゼロが思いついて訊いた。
「ね、ちょっと鏡を見せてよ。」
「鏡なら、そこの風呂ですよ。」
「ちっ、これだから男は・・・。
 姿見とは言わんけど、手鏡ぐらい持っとけよ。」
 
ブツブツ言いながらバスルームに行ったゼロが悲鳴を上げた。
「ひいいいいいいいいいいっ!」
 
血相を変えて、部屋に飛び込んで訴える。
「映ってないーーーーーーー!
 私、鏡に映らないーーーーーーー!」
 
「霊なんだから、それは当たり前じゃないかと・・・。」
「ええーーー、自分の姿を見たいーーー!!!
 あっ、写メして、写メ! 携帯で。
 たまに写ってるじゃん、霊、写真とかに。」
 
面倒くさいヒトだなあ・・・
と今度は太郎が思いつつも、携帯を構える。
「念のため数枚ね。 はい、ピース。」
 
カシャッ
 
 
「写ってる?」
「うーん・・・。」
どれも単なる部屋の写真になってしまっていたが
1枚だけ光の玉が写っているのがあった。
 
「何? もしかして、これが私とか?」
「そうみたいですね。」
「オーブとかさ、ホコリの反射じゃねえかい、と思っていたんだけど
 霊の場合もあるんだー? へえー。
 でも、つまんねーーーーーーーー!」
 
 
フテくされるゼロに、おずおずと太郎が言う。
「あの、もう寝ても良いですか?
 明日は朝一から講義があるんですよ。」
 
「待って、あなたには私がどういう姿で見えてるの?」
「ショートヘアの20代の女性ですね。」
「美人?」
「え・・・、よくわからないです・・・。」
 
「そうか、ブサイクなんか・・・。」
「い、いえ、そういう事は・・・。」
「気ぃ遣わんで良い。
 じゃ、寝てよろしい。 おやすみー。」
「はあ・・・、じゃ、お言葉に甘えて寝させてもらいます。」
 
「ああ、金縛らせちゃったらごめんねー。」
「そういうの、ほんとやめてくださいね!」
「冗談だって。 すぐ怒るんだな、太郎はー。」
 
何だか不安だな、と怯えつつ寝たが
その夜はいつになく熟睡できた太郎であった。
 
 
翌日、太郎が目を覚ますと、ゼロが宙で横になって爆睡していた。
霊も寝るんか? と意外だったが、あまりにもグーグー寝ていたので
起こすのも悪くて、そのまま出掛ける事にした。
 
ヘンな霊と関わり合いになったような気がするけど
今のところ害はないし、まあいいか。
 
気楽に考えた太郎だが
それは若さゆえに、ゼロの本質を見抜けないせいであった。
 
 
 続く。
 
 
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      カテゴリー 小説
      
      亡き人 1 10.11.17

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

亡き人 4

「うお、私、寝てた? 霊も寝るんだー!」
太郎と同じ事で驚くゼロ。
 
あれ? 太郎がいない。
あっ、そうか、大学に行ったんだー。
えー、じゃあ私、どうしようー。
 
TVのスイッチ、むーん むーん
・・・・・無理だ、入れられない。
 
あーーーーーー、ヒマーーーーーーーーーーー!
 
 
窓から外を眺めようとして、ついガラスをすり抜けてしまった。
いかんいかん、どうも加減がわからない。
ん?
 
下を見ると、夕べの血まみれの女性が立っている。
あ、あいつ、まだここらへんにいるー。
怒りが湧いたゼロだが、同時に少し同情心も起こる。
もしかしてあいつも、ここらへんから出られないんかな・・・。
 
 
「おーい、ちょっとこっち来てー。」
血まみれ女性に声を掛けると、女性はフワフワとゼロの近くに寄ってくる。
 
「言葉は通じるんだー?
 ね、あなた何でここにいるの?」
女性は無言のままである。
 
「喋れないんかー?
 うわ、頭、カチ割れてるじゃん!
 私、スプラッタほんと無理なんだよー
 それ、どうにかならない?
 目のやりどころに困るんだよねー。」
女性は無反応でうつむいたままだ。
 
傷が視界に入らないように、手で女性の頭をさえぎると
手の平が微かに発光したような気がした。
「?」
 
手の平を見ても異常はなかったが、女性の頭を見て驚いた。
「ちょ、傷、閉じてるよ!
 え? 何かした? あなた? 私?」
うろたえるゼロに、女性が目を上げた。
 
 
太郎が帰宅し部屋に入ると、ゼロがこたつに座っていた。
「おかえりー。」
その後ろに血まみれ女性も座っている。
「何でまたこの人がここにいるんですか!」
 
太郎の激怒をよそに、ゼロが嬉しそうにまくしたてる。
「ね、ね、ちょっと聞いて。
 私、癒しの天使かも知んない。
 私が手をかざすとね、この人の頭の傷が少し治ったんだよー。
 そんでね、最初は無反応だったのに
 今はちょっとだけど、うなずいたりするようになったんだよ。」
「だからといって、ここに連れて来ないでください!」
 
怒る太郎を意に介さないゼロ。
「だってこの人、この部屋のすぐ外にいたんだよ?
 放っといたら、また太郎に憑くかもよ?
 それより根本を解決した方が良くないー?」
 
「根本?」
「うん、成仏させる、とかさー。
 ほら、何かちょっと浄化された気がしない?」
 
 
太郎は見るのも恐かった血まみれ女性を
初めてマジマジと観察してみた。
 
「いえ、よくは見えないんですけど
 そう言われれば、イヤな感じが薄れてるような・・・?」
「でしょー?
 血まみれちゃん、一緒に頑張ろうね!」
 
「血まみれちゃん?」
「うん、名前がないと不便でしょ。」
ゼロの言葉に、太郎は自分の耳を一瞬疑った。
 
「あなたにうちの親の感性をどうこう言われたくないですね!」
「また、太郎ちゃん、すぐ怒るんだからー。
 そんなんだから霊が引き寄せられるんじゃないのー?」
 
 
太郎はゼロの言葉にショックを受けた。
ぼくの性格が霊を呼んでいるのか?
落ち込む太郎に、ゼロがお気楽に言う。
「ほらほら、そうやってクヨクヨすると、また悪霊が来るよー?」
 
「あなたにぼくの苦悩はわかりません!
 勉強するから、静かにしててください。」
怒りながら、本をドサドサと出す太郎を
ゼロが後ろから覗き込んだ。
 
「今時の大学生にしては感心だねー
 何か目標があるの?」
「弁護士になりたいんです。」
「へえー、しっかりと展望があるんだー。
 そういう事なら応援するよ、頑張ってねー。
 と言っても、茶も淹れてあげられないのが心苦しいけど。」
 
「いえ、ほんと静かにしてくれれば、それで良いですから。」
「んじゃ、血まみれちゃん、私たちは外で話をしようか?」
ゼロは血まみれちゃんを連れて、外へと出て行った。
 
 
ぼくは陰気な人間なんだろうか?
太郎は机の前で、しばらく考え込んだ。
 
 
 続く。
 
 
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      亡き人 5 10.11.30
            
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      亡き人 1 10.11.17 

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

亡き人 5

血まみれちゃんも、すっかり馴染んだある日
ゼロが太郎にお願いをした。
 
「ねえ、私も大学に連れて行ってよー。」
「・・・別に良いですけど・・・。」
「わーい! 退屈してたんだよねー。
 血まみれちゃんも来る?」
 
血まみれちゃんは、首を横に振った。
もう、はい いいえ の意思表示ぐらいは出来るようになっていた。
 
 
「んじゃ、血まみれちゃんはお留守番している間に
 何か物を動かす練習をしててよ。
 ポルターガイストとかあるじゃん
 努力したら、飯のいっちょも作れるようになるかもだし。」
 
「幽霊の作ったご飯ですか・・・?」
「だって太郎、バイト先でのまかないばっかりじゃん、ご飯。
 そんな食生活だったら、年取った時に体にガタがくるよー?
 ねえ、血まみれちゃん、そう思わない?」
血まみれちゃん、うなずく。
 
死んでる人に心配されるとは・・・
太郎は複雑な気分になっていた。
 
 
「で、何でおんぶなんですか?」
太郎の背中に、子泣きジジイのように張り付いているゼロが答える。
 
「だって太郎と離れたら、アパートに引き戻されちゃうかも知れないじゃん。
 それより、他の人には私は見えてないんだから
 話しかけたりしたら、ひとり言を言ってる危ない人に思われるよ。
 私は勝手に喋るけど、太郎は気を付けないと。」
 
これじゃ本当に取り憑かれているみたいだ・・・
太郎はゼロを連れて来た事を、少し後悔していた。
 
 
教室での講義中、大人しく子泣きジジってたゼロが声を掛けた。
「ねえ、さっきっから、すんげえ目が合うヤツがいるんだけど・・・。」
え? と、あたりを見回すと、遠くに座っている男性が
確かにこっちをチラチラ見ている。
 
「あの金髪のチャラ男、私をガン見してるんだよねー。
 もしかして私が見えるんじゃないの?」
 
その男性は同じ学年ではあるが、華やかなグループにいて
地味で真面目な太郎とは、ほとんど接点はない。
その彼が太郎を見るのは、確かにおかしい。
ゼロさんの事が見えてたらイヤだな、と太郎は思った。
 
 
案の定、講義が終わった直後、太郎にチャラ男が駆け寄ってきた。
「えーと、俺、山口っつんだけど、おまえ何て言うんだっけ?」
「長野です。」
「あ、そう、長野、おまえ体調悪くねえ?」
 
太郎が動揺していると、ゼロが余計な口出しをした。
「私が太郎に悪さなんか、するわけねえじゃん。
 ふざけた事ぬかしてると、おめえに祟るぞ、このチャラ男!」
 
「喋った!」
山口がゼロの恫喝に驚愕した。
 
「え? 山口くん、もしかしてゼロさんが見えるの?」
「ゼロ? この女? 見える見える。 こいつ霊だよ。
 俺、昔っからそういうのに敏感でさー。」
「呼び捨てにしてんじゃねえぞ、呪うぞ、この野郎!」
「おー、凄えー! 何? こいつ、おまえの守護霊?」
 
説明するのも面倒なので、太郎は適当に答えた。
「う・・・ん、まあ、そんなもんかな?」
 
 
その時、仲間であろう女の子が山口を呼んだ。
「何やってんのー?」
「あ、今行く。」
 
山口の返事に、ゼロが止める。
「あっ、ちょお待って!
 敏感っちゅう事は、私を写真に撮れるかも!!!
 ちょっと携帯で写してみてくれない?」
「いいっすよー。」
 
チャラ男はストラップがジャラジャラついたデコ携帯で太郎を撮った。
「見せて見せて。」
画面には、白い光のようなモヤが掛かっている。
 
「地味な心霊写真だなあ・・・。
 チャラ男、やっぱ使えんヤツだったな。
 もう行ってよし。」
 
「うわ、勝手な女だなあ。
 長野、おまえも大変だな、ま、頑張れよ。」
チャラ男は仲間のところに戻っていった。
 
 
「見たところ、遊び好きの派手グループってとこか。
 太郎とは世界が違うヤツだな。
 意外なヤツが私を見つけたねえ。」
「うん・・・。」
 
元気なく答える太郎に、ゼロが無神経に聞く。
「そういや、太郎、友達とかいないの?」
「バイト仲間とかはいるけど・・・
 ぼく、忙しいし、あんまり遊べないんです。」
 
自分に言い聞かせるように答える太郎に
ゼロはうんうん、と偉そうに相槌を打つ。
「うむ。 友人は選んだ方がいいから、それは正解だな。」
 
太郎はその意外な言葉に、ちょっと気持ちが弾んだ。
「そうかな?」
 
「太郎も社会に出たら、私の言ってる意味がわかるよ。
 大丈夫、おめえの道は間違ってないから。」
「おめえ・・・?」
「おっと、すまんのお、どうもどんどん地が出てきてるみたいだわ。」
 
 
この人は生前、一体どんな人だったんだろう?
太郎は疑問が増える一方だった。
 
でも、ぼくのやってる事は間違ってはいないんだ
ゼロの言葉に元気付けられ、それだけでも一緒にいて良かった
と、単純に嬉しくなった太郎だった。
 
 
 続く 
 
 
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      亡き人 1 10.11.17 

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