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天使か悪魔か

リアルババアあしゅのいらん事言いブログです。 昔の記事は http://maho.lomo.jp/nashural/ に。

黒雪伝説・略奪 1

♪ マッチョ マッチョメ~~~ン ♪
 
イキの良いBGMに合わせて
トレーニングルームで黒雪が、ウッホ、ウッホとスクワットをする。
 
「はあ・・・、ゴリラにしか見えないわん・・・。
 しかもオスの・・・。」
入ってきたキドが嘆く。
 
 
「あら、おまえがジムに何の用なの?」
「だーかーらー、何度も言ってるけど
 アタシの仕事は、黒雪さまの美容管理ですのよん。
 健康も美容の一環!
 で、トレーニングをしている間、これを塗っていてくださらない?」
 
キドは黒雪の顔に、クリームを塗り始めた。
「・・・これは何なの?」
「パックよん、パック。
 王子さまが帰ってきたら、またパーティーでしょん?
 それまでに、ここ! と ここ! の
 憎っくきシミを取っておかないと!」
 
 
黒雪がキドにグイグイとクリームを塗り込まれていると
王子の執事が転がるように部屋に入ってきた。
 
「た、大変です!!!!!」
 
「あれ?
 ネオトス、おまえ王子に付いて行ったんじゃないの?」
 
 
温泉を見つけて帰城した王子と黒雪に
北西の村から、鉱脈があるかも知れないという情報が入った。
 
黒雪は行きたがったが、妊娠の有無が判明するまで
城で大人しくしているよう言い残し
王子は執事を連れて、北西の村へと視察に行ったのである。
その配慮も虚しく、黒雪は筋トレなんぞをやっとるわけだが。
 
 
「はい、村へは無事に着きました。
 しかしそれは罠だったのです!」
「何とな!」
 
「海賊めらが村長の孫を誘拐し、脅していたのです!」
「何とな!!」
 
「海賊は、巷で噂の剛の者・黒雪さまを狙っていたのです!」
「何とな!!!」
 
「しかし黒雪さまがいないと知るや、王子をさらい
 返してほしけりゃ、黒雪さま御自ら迎えに来い、と。」
「何とな!!!!」
 
 
「イケメン王子がヤツらの毒牙に掛からないかと
 もう気が気ではなく・・・。」
 
キドが口を挟んだ。
「ちょっと待ってん。
 その海賊って男性なのん? 女性なのん?」
 
ネオトスが憎々しげに言う。
「全員女性なのです!」
「何とな!!!!!」
 
 
キドは黒雪を見ながら鼻で笑った。
「・・・黒雪さま、あんたバカみたいよん。」
 
黒雪がいくら怒りに拳を震わせても
海草パックを塗りたくられて顔面真緑なら、アホウにしか見えない現実。
 
「とにかく、村へ急ぐわよ!」
「ああっ、待って、せめてパックは拭き取ってええええええ!」
 
 
北西の村は特に雪深く、10月の下旬には既に行き来も困難となる。
短い夏が終わろうとしている今
王子救出作戦は1分1秒を争う急務なのだ。
 
黒雪は武器庫に行き、フル装備をし
兵士たちを引き連れ、北西への道を進んだ。
 
そりゃもう、活き活きと。
 
 
 続く 
 
 
関連記事 : 黒雪伝説・略奪 2 11.6.27
       
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

黒雪伝説・略奪 2

国の北西は、もう寒かった。
灰色の厚い雲で覆われた空が、雪の予告をしているようだ。
 
「黒雪さまですか?」
走り寄って来たのは村長だと名乗る老人である。
「王子さまが・・・、わしの孫も・・・。」
 
「で、そいつらはあそこですか?」
黒雪が見る方向には、大きな帆船が泊まっている。
 
 
「ちょっとあの一番小さい帆を撃ってみて。」
黒雪の命じるままに、兵士が大砲を撃つ。
 
ドッカーーーーーーーーン!!!
 
「おお、凄い凄い、命中したわ、腕が良いわねえ。」
黒雪の拍手に、砲兵が頬を赤くしながら頭を掻いて照れる。
 
 
「な、何事だ!!!!! 誰だ?」
船上から、うろたえた声が響く。
 
「はーい、王子の妻ですがー?
 お呼びになりましたよねー?」
甲板から見下ろす女性たちが、愕然とする。
「な、何だ、その軍隊は・・・。」
 
100余名の兵士に武器フル装備をさせ
自らも刃物携帯しまくりで、まるで針山のようになって
仁王立ちする黒雪が高笑いをする。
 
「権力というのは、こういう風に使うものですのよ。
 おーっほほほほほほほ」
 
 
「え、ええーい、黙れ黙れ、おまえの夫がどうなっても良いのか?」
縛られた王子が引っ張り出された。
 
「王子さま!」「王子さま!!」
兵士たちの間に動揺の声が広がる中
黒雪が嬉々として、王子に声を掛けた。
 
「王子ーっ、心配しないでねーーー。
 あの世でも絶対に、私はあなたを夫に選ぶからーーー。」
 
黒雪の奇妙な言葉に、海賊たちが王子に問う。
「あの女は何を言ってるんだ?」
王子は、悲しそうに微笑んだ。
「今から総攻撃をかける、と言っているんですよ。」
 
 
今度は海賊たちが動揺する番だった。
「王子であり夫であるこいつを見殺しにする、というのか?」
 
黒雪は、きっぱりと言い切った。
「おまえら、勘違いしてるようだけど
 大事なのは国であって、王族じゃないのよ。
 王族がいる理由は、国のトップがコロコロ変わると
 他国から信用されないからであって
 うちの王国には、もう跡継ぎがいるから
 私たちの命は、国の平定に捧げてオッケーなわけ。」
 
 
銃を天に掲げて、黒雪が叫んだ。
「おまえらのようなヤカラから国を守るため
 この身を捨てる事に、微塵のちゅうちょもないわ。
 思う存分、皆殺しにしてくれる!!!」
 
「「「「「 おーーーーーっ!!!!! 」」」」」
黒雪の雄叫びで、兵士全員が銃を掲げた。
 
 
「ままま待て! こっちには村長の孫もいるんだぞ!」
泣き喚く男の子が連れて来られた。
 
「あらま・・・。」
黒雪が村長を見ると、村長は唇を噛みしめた。
「・・・あの子も、まがりなりにもこの村の長の孫です。
 定めと思って、国のために散ってくれると思います。」
 
ギャン泣きしているんだけど・・・
黒雪はちょっと困った様子で考え込んだ。
 
「私たちが帰って来ない場合、あいつらを根絶やしにして良いから。」
隊長に小声でそう命令すると、持っていた剣類を外しながら
黒雪は甲板に向かって呼び掛けた。
「その子の代わりに、私が人質になります!」
 
 
黒雪の足元に積み重なる凶器を見て
一体どれだけ持ってくるのか、ゾッとした海賊たち。
 
 
 続く 
 
 
関連記事 : 黒雪伝説・略奪 1 11.6.23
       黒雪伝説・略奪 3 11.6.29
       
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黒雪伝説・略奪 3

甲板には、見事にガラの悪そうな女性たちが並んでいた。
「ふむ、北国人は縦にばかり伸びて
 筋肉が付きにくい体質だと思っていたけど、なかなかどうして。」
 
腕組みをしながらカツカツと、女たちの前を歩き回る黒雪。
「おっ、良いわねえ、この三角筋、私の近衛にならない?」
女性のひとりの肩を揉んで、ニッと笑う。
 
 
「奥さま!
 女性が相手でも、私は妬きますよ!」
後ろ手に縛られた王子が、女走りで黒雪に駆け寄る。
 
「・・・王子ぃ~~~~~~。」
 
黒雪が呆れたように言うと、王子が苦悩の表情を浮かべた。
「・・・奥さまの言いたい事はわかっております。
 さらわれるなんて、姫の仕事ですよね、くっ・・・。」
 
 
黒雪が溜め息をつきながら言う。
「もう、あなたには自爆装置でも着けときましょうかねえ?」
 
「そ・・・そんなあああああ。」
「うそうそ、冗談よ。 ちゃんと私が助けてあげるから。」
黒雪が王子の手首の縄を噛み千切る。
 
「待て! 誰が王子の縄を解いて良いと言った!」
列が割れ、ひとりの女性が現われた。
「あれが海賊の頭領です。」
王子が黒雪に耳打ちする。
 
身長は向こうが高いようだが、黒雪の方がゴツい体型である。
海賊の頭領だと言われるその女性は
白い肌、金色の髪に青い瞳の、筋肉がなければ美女である。
 
 
「おまえ、こんなひ弱な男でも、縛っていなきゃ安心できないの?」
黒雪がズイッと前に出る。
鼻をくっ付けんばかりに睨み合うふたり。
 
「さすが、豪傑と噂される姫さんだね。」
「おまえこそ、その眼輪筋は見事だわ。」
 
 
「では、ひと試合願おうかな。」
頭領が部下から木刀を受け取った。
 
「ちょ、私の武器は?」
「武器、持ってきてないのかい?」
黒雪は上腕二等筋を見せつつ、誇った。
「この筋肉が武器でね、ふっ・・・。」
 
「・・・じゃ、いくよ。」
「あ、待って待って、すいません、調子こきました。
 やっぱ何か貸してー。」
 
部下がもう1本、木刀を投げた。
「では・・・。」
 
 
木刀の先をピタリと合わせるふたり。
その瞬間、電流が走るような手応えを感じたふたり。
 
この女、強い!
 
 
足場の悪い船上での試合は、黒雪には不利であった。
どうやら技術的にも運動能力的にも、この頭領の方が優れている。
しかし国を背負っている以上、一海賊に負けるわけにはいかない。
黒雪の勝ち目は、その気合いだけであった。
 
頭領は驚いていた。
王族、それも大国東国出身の姫が、自分とほぼ互角に打ち合っている。
しかも何だか嬉しそうである。
 
カンカンカンカン と、打ち合う音に合わせて
踊るように活き活きと木刀を振るう、この地黒のゴッツい姫が
時々神々しくも見え、圧倒される。
 
 
あたしの方が、場数を踏んでいるはず
現に、確実に勝負は付いてきている。
なのにこの姫の表情には、余裕すら伺える。
 
これが王族というものなのか
頭領には、より多く黒雪に打ち込みながらも敗北感が湧き起こった。
 
 
勝っても良いものか、頭領がありえない迷いを始めたその時
船室から部下のひとりが走り出てきた。
 
「3号船から救助要請です!」
 
 
 続く 
 
 
関連記事 : 黒雪伝説・略奪 2 11.6.27 
       黒雪伝説・略奪 4 11.7.1 
       
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黒雪伝説・略奪 4

急に打ち合いを止めた頭領に
打ち込みかけた黒雪が、勢い余って甲板に転げる。
 
「あ、すまない、何やら緊急のようだ。
 あんたら、船を降りて良いよ。
 勝負はまた今度、って事で。」
 
頭領は、仲間の危機だというのに
“黒雪に勝たない” 理由が出来て
ホッとしている自分の心理が不愉快だった。
 
 
操舵室に入ろうとする頭領に、王子が訊ねた。
「“救助要請” という、重大事件に驚きもしない。
 あなたには3号船に何が起きたのか、わかっているようですね?」
 
へえ? と、うがつ表情をする頭領に黒雪がノンキに言う。
「この人、頭脳担当だから。」
 
 
「実は数年前から、ここら近辺の海で怪物の目撃情報が多発していて
 あたしたちはそいつを、“シーデビル” と呼んでいる。
 3号船は、多分そいつに襲われている。」
 
「She Devil? Sea Devil?」
「海の方だよ、海の悪魔。 どこぞの映画ではない。」
 
「それはイカなの? タコなの? エビなの? カニなの?」
「寿司ネタかい!
 よくわからないけど、とにかく化け物らしい。」
 
王子と黒雪は目を合わせた。
「これは・・・。」
「ですよね・・・。」
 
 
王子が甲板から身を乗り出して、軍の隊長に叫んだ。
「ちょっと事故が起きたので、調査に行ってきます。
 あなたがたは、1週間はここで待機
 だけど雪で道が封鎖される前には、首都に戻ってください。」
 
黒雪がヒョイと横から顔を出す。
「あ、私たちが死んで、こいつらが生きてた場合
 王族殺害の見せしめとして、こいつらを根こそぎ退治してねー。」
 
無邪気にそう叫ぶ黒雪を見て、海賊たちはゾッとした。
それを知ってか知らずか、黒雪が微笑む。
「さあ、協力して3号船を助けましょう。」
 
 
「ちょっと待て!
 何故おまえらも行く?」
 
「それは多分私たちじゃないと、やっつけられないからです。
 その海の悪魔は。」
頭領がいぶかしげに訊く。
「どういう事だ?」
 
「王族には、国を守る義務と力が与えられていて
 あなたたちも国民だ、と言う事よ。
 さあ、さっさと出港して!」
タルをガンと蹴る黒雪。
もうシビレを切らしたらしい。
 
 
冬間近の北の海を、ふたりはナメていた。
ザッパンザッパンと上下左右に揺れ動く船で
ものすごい船酔いで、王子が完全にダウンしたのである。
 
「ああ・・・、足の下に地面がない・・・。」
王子はうなされにうなされている。
 
「あんたは大丈夫なのかい?」
様子を見に来た頭領に、黒雪は笑った。
「あはは、知恵が回るから目も回るのよ。」
 
 
頭領がジロジロと黒雪を見る。
「何かしら?」
「あんたみたいな女が、何故あの弱っちい男と結婚したわけ?」
 
黒雪は即答した。
「北国を豊かにしたい気持ちが一緒だったからよ。」
頭領はバカにした笑いをした。
「それは表向きだろう?」
 
黒雪は仁王立ちで腕組みをした。
「今から遭う化け物を退治できたら、あなたにも理解できるわよ。
 キレイ事だけでは命を張れないのよ!」
 
 
 続く 
 
 
関連記事 : 黒雪伝説・略奪 3 11.6.29 
       黒雪伝説・略奪 5 11.7.5 
       
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黒雪伝説・略奪 5

化け物に襲われる3号船を前に、全員が凍り付いていた。
2号船に、ドデカいタコが絡み付いていたのである。
 
「・・・オクトパスってやつ・・・?」
RPGで化け物の名前を覚えたヤツがほとんどのはず。
 
「ねえ、水生動物に効く雷系の呪文は誰が習得してたっけ?」
「この世界に魔法があるのなら
 まず私に回復呪文を掛けてもらいますよ・・・。」
逃避する黒雪に、船酔いでヨロヨロの王子が言う。
 
 
「とにかく、3号船の乗員を全員こっちに避難させてください。」
真っ青な顔色をしつつも、王子が海賊たちに指示を出す。
 
「何でおまえの言う事を聞かなきゃならないんだよ!」
こんな時にまでそんな反抗をする手下に
黒雪が思いっきりケリを入れる。
 
「それはな、この王子の妻である私が
 おまえらのために命を賭けるからなのよっ!
 立場やらメンツやらの話題は、生き延びた暁にして!」
 
 
3号船に次々にロープが架けられ、それを伝って乗員が逃げてくる中
黒雪は逆に3号船へと渡って行った。
 
「あの女、まさかあの大ダコに向かって行くのか?」
頭領が王子を引きとめる。
「あれを退治するのが、私たちの使命なのです。
 あの船の武器庫はどこにあるんですか?」
「船の中央後部の地下二階にあるけど・・・。」
 
「奥さまーーーっ、武器庫は船中央後部の地下二階ですってー。」
黒雪に向かって叫んだ後、頭領に言う。
「私が渡り終えたら、ロープを切って
 あなた方は港へと急いで逃げてください。
 これを見せたら、軍隊長はあなた方を処刑はいたしませんから。」
 
王子は頭領に、指輪と共に手紙を渡した後
ロープをえっちらおっちら伝い始めた。
 
 
大ダコが絡みつく船は
何のアクティビティーなのか、と問いたいほど揺れていた。
こ・・・これで地下まで行くの無理!!!
甲板を前後左右に滑りながら、黒雪はなすすべがなかった。
 
王子が甲板に転げ落ちてくる。
「王子! あなた、よく渡ってこれたわね。」
「ええ、ロープを腰に巻いて何とか。」
王子がゼイゼイ言っている。
もう生きる屍のようにヤツレている。
 
 
「この生物は、魔界産ですよね?」
「うん、そう思う。
 てか、そうであってほしい。
 人間界にこんな生き物、いらんわ。
 そういうつもりで、カタを付けましょ。」
 
「ですよね。
 でもヘタに傷つけると、もっと大暴れするでしょうし
 最悪、逃げる可能性も・・・。」
 
ズシャーッ ズシャーッ と滑りながらも、話し合うふたり。
「アチッ、摩擦で服が燃えそうですよ。」
そこへザッパーーーンと波が掛かる。
「冷たっ! 熱いか凍りそうか極端な責めですね。」
 
まったく男は、暑い寒い暑い寒い、いっつもうるさい。
言っても、何も状況は変わらないのに。
 
しかし打ち付ける波しぶきは
大勢の幼児に往復ビンタをされてるように、不愉快な痛みがある。
「もう・・・、このタコも何でこんなに元気いっぱいなのよ?
 何のハッスルタイムなの?」
 
 
「あなた、地下に行って爆弾か何かを探してきて。
 最終的には、それを口に放り込んで爆発してもらおう。」
「あなたはどうするんですか?」
 
「私はとりあえず足を切ってみるーーーーー。」
言いながら黒雪は、タコの足の方へと平泳ぎで甲板を滑って行った。
 
 
 続く 
 
 
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