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天使か悪魔か

リアルババアあしゅのいらん事言いブログです。 昔の記事は http://maho.lomo.jp/nashural/ に。

かげふみ 1

グリスという名前以外、何も持っていなかった。
疑問ですら、持たなかった。
 
自分が何故グリスという名前なのか、どこから来たのかなど
そんな事を 「どうでも良い」 と、考える余地すらなかった。
 
 
厳しい寒さがやわらぎ、過ごしやすくなってきた。
冬は食べ物が腐らないのは良いんだけど、いる場所に困る。
親切な教会は、いつも大勢の家がない人でいっぱいで
入られない事もあるし、夜が明けたら出て行かなければならない。
 
凍った道路でゴミ箱を漁り、凍った残飯を食べている内に
体のあちこちが赤く腫れて、痒くてしょうがなくなる。
この状態がひどくなると、肌が腐れていくと聞いた。
現に道で死んでいる人は、例外なく顔や手がただれている。
 
やっとこれから暖かくなるだろうけど
次は腐った食べ物で死ぬ危険が待っている。
グリスには、“生きる” 事すら考えてはいなかった。
 
生きていられなくなったら死ぬだけ
ただそれだけである。
 
薄暗い空に、薄暗い建物に、薄暗い表情。
見上げるグリスの目には、灰色しか映らない世界であった。
 
 
ガッコンガッコンボボン と、よくわからない音を立てて車が停まった。
縦にも横にも大きい男が開けたドアから降りてきた女性に
グリスの目は釘付けになった。
 
キレイ・・・・・
 
そう素直にグリスが思った、その女性は
美術的には、決して美しい姿をしているとは言えなかった。
グリスが心を奪われたのは、その絶望のなさにだったのだろう。
 
この街を行きかう人々は皆、一様にうつむいているのに
その女性は、真っ直ぐ前を見据えて立っていた。
 
グリスは遠巻きに女性の後をつけた。
さっさと食べ物を探さないと、食いっぱぐれてしまう。
しかし、どうしてもあの女性を見ていたいのだ。
 
 
お昼間近までは、まだまだ冷える。
鼻をすすりながら、グリスは女性の後を追う。
 
と、急に女性がこちらを振り向いた。
目が合ったかは定かではないが、その姿がどんどん大きくなり
次の瞬間、女性はグリスの目の前に立っていた。
 
心なしか、良い匂いまで漂ってくる。
こういう場合は、罵られるか殴られるかで
それをわかっているからこそ、自分以外の人間は誰も寄っては来ていない。
しかしそれを覚悟してでも、グリスの目は女性から逸らせず、足は動かない。
 
 
女性が何かを訊いたようだが、その言葉は理解できない言語だった。
どうしていいのかわからず、だけど我を忘れて見つめるグリスの顔の真ん前に
女性の顔がズイッと近付いた。
 
女性のこげ茶色の瞳が、グリスの目を射抜く。
グリスは小刻みに震えた。
畏怖とも歓喜ともわからない心の震えだった。
 
 
気が付くと、いつもの部屋の天井に
世話係のマリーの顔がヌッと覗き込む。
「おはようございます。」
 
もう起きる時間なのか。
 
 
夢を見ていた。
主様と出会った時の光景だ。
 
何度も何度も、繰り返し夢に見る。
それ程、鮮烈な体験だった。
 
グリスは7歳になっていた。
・・・書類上は・・・。
 
 
 続く
 
 
関連記事 : かげふみ 2 11.
 
       そしてみんなの苦難 1 11.5.16
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かげふみ 2

マリーはグリス付きのメイドである。
母親のように愛し、世話を焼いてくれる。
 
長老会から派遣されているのは
語学の教師、基本教育の教師、礼儀作法の教師である。
専属護衛のリーダーはタリスであった。
 
「まだお小さいのに、勉強など・・・。」
という意見は、主の
「普通の子供と同じに考えてもらったら困ります。」
というひとことで、かき消えた。
 
この館で主に逆らえる者など、いや結構いるんだが
主の “館第一” という気持ちに逆らう者はいない。
主がそういう生き方をしてきて、現実に結果を出しているからである。
グリスには、遊びの時間も教育の一環となった。
 
 
そんな、子供にしては多忙なグリスだが
一番楽しみにしているのが、運動の時間だった。
その理由は、担当がラムズだったからである。
 
彼は館に来た頃の主と、実際に接触した人物のひとりで
運動の合間合間に、あれこれと話してくれるのだ。 
グリスは主のその “武勇伝” を聞くのが大好きだった。
 
「主様はな、そりゃ勇ましかったんだぜ
 警棒をシュッと出して、こう構えてな。」
身振り手振りで、当時の事を語ってくれるラムズ。
 
「・・・ただな、ヌケたところもあって、出した警棒をしまえないんだよ。
 あれには笑ったね。」
 
ラムズの話から、当時の館が戦場であった事をうかがい知る。
その喧騒のさなか、主が勇ましく進む。
旗を持って軍を先導するジャンヌ・ダルクの絵画のように。
 
 
グリスがそこまで主を美化していたのには理由があった。
ほとんど主の姿を間近に見られないのだ。
 
「お忙しいお方ですから・・・。」
それが周囲の常套句だったが、自分が避けられている気分であった。
その証拠に、長老会のリオンはしょっちゅう主の部屋に来ている。
 
だけどスネるわけにはいかない。
屋根がある居場所と温かい食べ物を与えてもらっているのだから
それだけでグリスにとっては、感謝して余りある事で
その上に我がままなど言えるわけがない。
 
 
「一生懸命お勉強なさっていれば
 その内に主様の右腕として、一緒にお仕事ができますよ。」
その言葉を支えに、グリスは勉強に励んだ。
 
グリスは子供だったが、自分の立場をわきまえていて
そこは確かに “普通” の子供とは違っていた。
 
 
「主様にはいつ会えるの?」
何度となく言ったこの言葉は、グリスの胸の奥にしまいこまれた。
 
 
 続く 
 
 
関連記事 : かげふみ 1 11.10.27 
       かげふみ 3 11.11.
 
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かげふみ 3

グリスは毎日、主の演説を聴きに講堂に通っていた。
それを主も確認してくれているようで
お互いに遠目ながら、目が合う瞬間は日に一度はあったわけで
それだけでも、何となく見守られている気分になるのが嬉しかった。
 
 
そんなある日、偶然に廊下でグリスは主とハチ合わせた。
「こ・・・こんにちは、主様・・・。」
顔を真っ赤にしてモジモジとしながらも
はっきりと挨拶をするグリスに、主は驚いて言った。
 
「こんにちはー。
 ・・・って、あれーっ? 英語を喋っているー!」
 
護衛のタリスが呆れて言う。
「1年ほどで普通に喋れるようになられたんですよ。」
 
主は、う・・・ と動揺した。
「もしかして、私、ネグレクトしていますかー?」
「しておられますねえ。
 もう7歳なんですよ、ご存知でしたか?」」
 
「えー? あ、ああー、そうなんですかー・・・。」
グリスの歳も知らなかった主は、考え込んでいた。
その様子を、ジッと見つめるグリス。
 
 
「・・・?
 ・・・この子は何でこんなに私を凝視しているんですかねー?」
「ああ・・・、何故だか主様がお美しく見えるようで。」
タリスは無意識にむちゃくちゃ失礼な言い方をしている。
 
「えっ、マジでー?
 教育係は何をしてるんですかー?
 正しい審美眼を持たせないとダメじゃないですかー。」
どうやら主の自分評価は冷静なようだ。
 
「グリス、口裂け女のような事を問うけど、私キレイですかー?」
主の質問に、グリスは一層モジモジしながら答えた。
「・・・主様は他のどんな人よりもお美しいです・・・。」
 
「こ・・・これは子供特有の何かですかねえー?
 目の検査とかしていますかー?」
「健康診断は定期的に行っていて、何も問題はないそうです。
 主様に滅多に会えないから、お寂しくて
 極端に美化していらっしゃるんじゃないでしょうか。」
 
タリスの無礼極まる言葉にまったく動じない主。
「うーん、子供と接するの、きっついなあー。」
 
 
その会話を聞いていたグリスが、不安そうに訊いた。
「主様は私がじゃなく、子供がお嫌いなんですか?」
その言葉は、益々主を反省させた。
 
「グリス、あなたの事を嫌っているわけではありませんー。
 私は子供が嫌いなだけですー。」
「どうしてですか?」
 
「子供は、空気を読んで私に気を遣わないからですー。
 たまに気を遣う子供もいますが
 気を遣っている様子を私に気付かせるので、イヤなんですー。」
 
 
「・・・何という理由ですか・・・。」
呆れ果てるタリスだったが、グリスには希望が見えてきた。
 
「では、私は主様の望む子供になります。
 だからどうか、お側に置いてくださいませんか?」
「そうですねー、では通常教育をしっかり身につけて
 うーん、13歳ぐらいになったら私の仕事を学びに来てくださいー。」
「あと6年・・・。」
 
 
うなだれるグリスを見て、タリスは主を睨んだ。
こんなに慕っていらっしゃるのに、主様ときたら・・・。
 
主はタリスの目を気にしつつも、グリスに語りかける。
「グリス、ちょっとよく聞いててくださいねー。」
そう言うと、タリスに向き直った。
 
「タリスさん、私はキレイですかー?」
突然の、しかも答えにくい質問に、タリスはパニくった。
今更なのは、主もタリスも気付いていない。
 
「え? あ、いや、その、人間にはそれぞれ魅力というものがあって・・・」
「そういうキレイ事じゃなくー!! 正直にー!!!」
 
主の剣幕に、タリスはつい本音を叫ぶ。
「NO! サー!」
 
つい勢いで言ってしまい、アタフタするタリス。
すぐ冷静さがなくなるところは相変わらずである。
 
 
普通に考えたら無礼討ちものだが、主はグリスに諭すように言う。
「いいですかー? これが世の中の意見なのですよー。
 あなたはまず、一般的な感覚を学ばねばなりませんー。
 それが私の教えを受ける前準備なのですよー。」
 
「主様をお美しいと思う気持ちは間違っているのですか?」
「間違ってはいないけど、変質者ですー。」
「主様、子供相手に何て事を!」
 
 
タリスは、やはり主に子供の教育は任せられない、と思い
主は、まったく今時のガキはわけわからん、と思い
グリスは、主様はお美しい上に論理的だ、と、うっとりしていた。
 
 
 続く 
 
 
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かげふみ 4

さすがにちょっとは反省しとんのか、主が道場にやってきた。
グリスの今の時間は、ラムズの運動の時間だからだ。
 
ラムズの本職は大工だが、主の改革の際に敷地内に道場を建てて
そこで自己流の武術などを希望者に教えているのである。
ま、早い話が、マニアの押し付け教室である。
 
 
「よお、主様、珍しいじゃねえか。」
ラムズとは結局あれっきりで、ご無沙汰である。
 
関連記事: ジャンル・やかた 17 09.10.15
 
「久しぶりですねー。」
「いや、俺はちょくちょく講堂にも行ってたぜ。
 陰ながら応援してたんだぜえ?」
「それはありがとうございますー。
 ところでグリスの・・・、あっ、あれは三節棍じゃないですかー!」
 
壁に掛かっている武器の中から、目ざとく見つける主。
「おうよ、あれからすぐ作ったんだけど
 あんたはもう戦わない、って聞いたんでな。
 渡さずに自分で練習してたさ。」
 
「そうだったんですかー。
 で、どうですかー? 使い心地はー。」
「確かにトンファーよりは便利だな。
 攻撃範囲がかなり広がるぜ。
 ただ、相手に止められるとちょっと苦戦するが、その場合は・・・」
 
 
話し込んでいると、後ろでかすかに気配がした。
ふたりが振り向くと、運動着に着替えたグリスが立っていた。
「あっ、お話の途中で申し訳ございません。
 私の事は気にせずに、どうぞお続けください。」
 
「おう、すまんすまん、じゃ、最初はランニングな。
 おーい、タリス、今日はおまえだけで付き添ってくれー。」
 
 
タリスがグリスと一緒に出て行った後に、ラムズが言った。
「で、今日は次期様の様子を聞きに来たんだろ?」
「ええ、そうなんですよー。
 どうも妙な感覚を持っているようなんで、ちょっと気になってー・・・。」
 
「ああ、あんたをキレイだとか言うたわごとだろ?」
何故すぐに言い当てる? ラムズも大概、失礼なヤツである。
 
 
「あれはな、心配いらんよ。
 ほら、ヒナが最初に見た物を親と思い込むだろ
 あんなようなもんじゃねえのかな。」
 
「ああーーー、なるほどーーーーー!!!」
主が大納得して、左手の平を握りしめた右手でポンと叩いた。
 
「いやあ、詰め込み教育の弊害かと心配しましたよー。」
「次期様は心配いらないんじゃないのかな。
 大人並みにしっかりしてるぜ。」
 
「あの歳で大人レベル、って大丈夫ですかねー?」
「逆に、次期様が幼稚だったらマズくないかい?」
「それもそうですよねー。」
ラムズと主は、同時にはははと笑った。
能天気なふたりである。
 
 
「んじゃ、また来ますー。」
「おう、マジでちょくちょく様子を見に来てやんなよ。
 次期様がグレるとしたら、あんたの放置のせいだぜ?」
うっ・・・、と言葉に詰まりながら、道場を後にする主。
 
その数分後に、ランニングを終えてグリスが戻ってきた。
「主様はっ?」
あたりをキョロキョロしながら、珍しく大声を出すグリス。
 
「もう帰ったよ。」
「・・・そうですか・・・。」
うなだれるグリスを、ラムズが慰める。
「まあ、そうしょげんなって。
 また来る、って言ってたからさ。」
 
「・・・それは本当なんでしょうか・・・
 主様の事は、講堂以外では拝見する事すら出来ないのに・・・。」
 
ラムズがグリスの頭をポンポンと叩く。
「あんたの事を気にかけてたぜー?
 ちょくちょく来るように言っといたからさ。」
グリスの顔がパッと明るくなった。
 
 
「それにしても、ラムズ先生は主様と本当に仲良しなんですね。
 主様が熱心に先生とお話してらっしゃってましたし。」
「おう、そうよー。
 主様とは初対面の時からウマが合う、っちゅうか、意気投合したもんなー。
 この武器は三節棍って言うんだけど、主様が勧めてくれたんだぜー?
 俺はトンファー、ってこっちのこれだけど、当時これを使っててな・・・」
 
ラムズが活き活きと武器の説明をするのを
先ほどの主のように、聞き入るグリス。
 
 
こんな授業が何の役に立つのか、はなはだ疑わしいもんだが
主の話を聞くのが、現在の一番の楽しみであるグリスにとって
ラムズの授業は、待ち遠しくてならない時間であった。
 
 
 続く 
 
 
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       かげふみ 1 11.10.27 
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かげふみ 5

「えーっ!」
教育係の言葉に主が驚いた。
 
「グリス様は、わたくしが教えるべき事をすべてマスターなさいました。
 あとは専門教育になりますが
 わたくしはその教員免許は持っておりませんので
 教育係の交代が必要となります。」
 
「あの子、天才少年だったんですかー?」
「おそれながら客観的に申し上げますと、努力型だと思われます。
 主様、グリス様に通常教育を身に付けたら
 お側に上げる、とおっしゃったそうですね?」
 
「ああー・・・、何か言ったようなー・・・?」
「グリス様は、早く勉強をマスターすれば
 それだけ早く主様の元に来られるかも知れない、と
 寝る間も惜しんで努力なさっていました。」
 
うあちゃーーーっっっ
 
主はウカツな言葉を後悔した。
勉強うんぬんじゃなくて、年齢の面で
ガキのおもりは自分には荷が重い、という意味だったんだけど・・・。
 
 
書斎で頭を抱えていると、ジジイとリオンが入ってきた。
「・・・ノックもなしですかいー。
 って、おふたりとも、何でここにいるんですかー。」
「いつもの徘徊じゃ。
 そんな事はどうでもよい。
 話はすべて聞かせてもらったぞ。」
「何の刑事ドラマですかいー。」
 
案の定、ジジイは主を非難し始めた。
「大体、あんたが相手をしないから、こういう事になっとんのじゃろうが。
 連れて来といて面倒はみたくないなぞ、ひどすぎんか?」
 
「面倒は普通、専門家がみると思うじゃないですかー。
 館の方針は毎日の私の演説でわかるはずですしー
 ある程度大人になったら、執務系は教えるつもりでしたしー
 まさかそこまで私に固執するとは思いませんでしたよー。」
 
主が泣きを入れると、リオンが擁護した。
「そうでーす、大事な人格形成の時期に
 この主の側に置いとく方が危険でーす。
 マトモな専門家に任せたのは正解でーす。」
主は無言だったが、イライラしてきているようだ。
 
 
「で、どうしますー?
 10歳で高度な教育とか、良いもんですかねー?
 それか、今更普通の学校に入れるとか、アリですかねー?」
「教育の方は、本人の希望を取り入れて考えるとして
 結果を出したんじゃから、それに応えるのが義理じゃないかえ?」
「・・・ですよねえー・・・。」
 
「あの子を、“普通の子供” として育てなかったのはあんたじゃろ。
 現に普通の子供じゃなくなっとる。
 “子供” として接する必要もないんじゃないか?」
 
その言葉に、主は気が楽になった。
「ああー! それもそうですよねー。
 さすがジジイー! ムダに長生きはしてませんねー。」
「あんたは・・・・・・・」
 
 
「私が思うに、ニッポンのマンガやアニメを見せて
 情操教育をするのはいかがでしょーう?
 どれも正義と人情あふれる内容で感動しまーす。」
リオンの提案に、主もジジイも呆れ果てた。
 
「アホかー!
 それでいったら、私らは完璧に悪役側なんですよー?
 ヘタに正義感を持たれて敵に回られたら、たまらんわー!」
「おーう、そうでーした。
 大抵のマンガじゃ大金持ちも悪ですから、私もヤバいでーす。」
 
「相変わらずの金満家ぶりじゃな・・・。」
「血筋が良いのに、ここまで下品ってのも珍しいですよねー。」
「恐れいりまーす。」
 
「「褒めてないから!」」
主とジジイが同時にビシッとリオンの胸をはたいた。
 
「・・・わしら、何のかんの言っても息が合うとるのお・・・。」
「はいー・・・、ですが、何故かそれが不愉快なんですよねー・・・。」
 
 
暗く沈んだ書斎の空気を読まずにブチ壊したのは、リオンであった。
「何はともあれ、グリスの次期主養成開始のお披露目を
 長老会でしましょーうよ。」
 
「そうですねー、責任は皆でおっかぶりましょうー。」
「・・・あんた、とことん逃げ腰じゃな。」
 
ジジイの的を射た突っ込みを、主は聴こえていないフリをした。
 
 
 続く 
 
 
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