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天使か悪魔か

リアルババアあしゅのいらん事言いブログです。 週一更新。 昔の記事は http://maho.lomo.jp/nashural/ に。

殿のご自慢 88

東への遠征の拠点として、いくさの時季は
高雄たちは、東の中央近くの城に
逗留する事が多くなった。

そこは山城家が滅亡した時に
うち捨てられた城のひとつであった。
そこを高雄は “東 (ひがし) 城” と
名付けた。

「そのままの名前
 いかにも高雄さまらしいですわ。」
青葉はクスクス笑ったが
高雄は、趣味に生き早世した父のような
風情を嫌っていた。

幸いにも、青葉は女にしては珍しく
そういう事は、“教養” の一貫としてしか
捉えていないので
その点のうっとうしさはなかった。


青葉の弟、矢風は高雄に心酔していた。
いくさの合間を見ては東城に来て
高雄と酒を酌み交わしていた。
高雄も、この聡明で健気な義弟が
気に入っていた。

「龍田の姫を娶った義兄上が
 天下を統一するのが、一番筋が通る
 と、東の民は申しております。」

天下獲りに高雄は乗り気ではなかった。
だが妻の青葉が、出来ないなりに
必死に戦っている。

そういう者は応援したくもなる。
しかし、その応援は自分が立つ、という
結果に繋がるのである。

民衆は “女将軍” を好まない。
だが、皮肉な事に高雄への支持は
青葉がいてこそなのである。

真の “対” になろうとは・・・
高雄は青葉が八島城に来た頃を
思い出していた。

何十年も昔の気がする。
それほど、あの頃と今は
様変わりしてしまっている。


「私、このいくさで
 思い違いに気付きました。
 “身分など関係ない”
 そう思っていたのですが
 それは浅はかでございました・・・。
 山城家のいくさ時代とは
 民衆の支持が違うのです。」

矢風が思うそれは、高雄も感じていた。
八島の西と違って
山城がまとめようとしていた東は
伝統ある大名家でも、骨がある家が多い。
山城が苦戦していたのは
そのせいでもあった。

中でも山城に次ぐ勢力を持っている
久賀 (くが) 家が
矢風に婚姻による同盟を
申し込んできているという。

「久賀家の思惑は、千早家の天下統一に
 乗りたいのだと思われます。
 義兄上は正妻が私の姉上なので
 そういう話は今後全部うちに来るはず。
 “赤槍の赤染め姫” を
 無碍 (むげ) には出来ませんからね。」

矢風の口調は、本当に
昔の自分を見ているようであった。
ただ違うのは、そこに勢いがある事。
矢風は政治を楽しむ気質を持っていた。


高雄は杯を置いて問うた。
「ふむ・・・、それでどうするのか?」

「それが義兄上への
 補助になるものである限り
 もちろん、来る話は全部受けます。
 同盟が上手くいけば
 東の統一も早まりましょう。」

矢風はニコッと笑った。
爽やかな好青年に育ったが
そこに気品も備わっている。
高雄は矢風の本気を、改めて感じ取った。

「そうか、頼んだぞ。」
「はっ!」


大名の結婚は政治。
愛だ恋だで成り立つものではない。

青葉と伊吹の件を知っている者は
全員がそれを思い知らされた。
そして “身分” という、歴史の重さも。


戦場を駆ける青葉を見て、高雄は思った。

いくさを嫌う姉と、積極的に出る弟、
最初はまったく正反対の
姉弟だと思っていたが
あの挑み方は、そっくりではないか。

だが、高雄は好意を弟にしか向けなかった。


 続く 


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