天使か悪魔か

リアルババアあしゅのいらん事言いブログです。 昔の記事は http://maho.lomo.jp/nashural/ に。

ファイアーオブロマンス

2004年の記事。


私はライターにはこだわりがある。
愛用するのは100円ライター。
ただし、電子式のじゃないとダメだ。
あの指で歯車みたいなんを回す100円ライターは
指先が石の粉で黒く汚れるのだ。

以前はジッポーを使った時期もあったが
私は別に風雨の中、タバコに点火するわけでもねえし
オイルが臭くてタバコが不味くなるのでやめた。
その後、雑貨屋で見つけたゴジラのライターに
一目惚れして愛用していた。

このゴジラのライターはガス注入式で
3cmぐらいの高さのゴジラ縮小版ライターなのだ。
背びれを押すとゴジラの口から火が出る仕組みである。
ところがこれにも欠点があった。

まず重い!
たかが火を点けるだけのモノなのに
何でこんなに重いんだ? と恨むほど重い。
疲れてる時などは、その重量感がどんどん増してきて
子泣きじじいかい、おめえは! と、叩きつけたくなる。
それに形がゴジラなので
デコボコしててポケットに気軽に入れられない。

そして何より、喫茶店とかでこれを使ってると
ジロジロ見られて
どうも他人からはアホウと思われてる気がしてならない。

ツレも 「それ、いいけど恥ずかしいよ
家でだけで使って」 と、訴えてくれるし。
まあ人目を気にしてたら、私なんか初手から
生きる資格はなくなるので、それはいいんだが
さすがお遊びアイテム、
数ヶ月で背びれが壊れて使えなくなってしまった。

そういう経験を重ねて行き着いたのが
100円ライターである。
軽いし、ザツに扱えるし、手入れはいらないし
ようするにラクなだけだが。


さて、こだわりと言っても
全然こだわってなかった私と違って
マジでこだわってるヤツがいる。
そう、その存在理由自体にもこだわりたい、
謎のうちの兄である。

こいつのタバコはショートピースで
しかも缶入りじゃないといけないらしい。
箱入りは味が違うと言い張り
缶入りのショートピースを箱に詰め直して
持ち歩いている。

兄の使うライターは、マッチである。
しかも木の芯じゃないとダメだそうだ。
昔は飲食店にはマッチが置いてあったが
今はそんな店も少ないので
金属製のマッチケースに
徳用マッチを詰め替えて持ち歩く。

木軸マッチを使う理由は、「味が違う」 そうで
私にもマッチを使わせ
「な? 違うだろ?」 と、答に困る質問をしやがる。

大抵の人は、兄の穏やかだが
インテリっぽい雰囲気に騙されて
「そう言われればそうですね」 と、洗脳されるが
私は 「わからん!」 と、正直に答え
兄を落胆させるのだ。
童話では正直者にはご褒美があるのに
現実では正直者には非難の雨あられが待つ。


ライターといえば
御大を登場させないわけにはいくまい。
歩く世間知らず、うちの故おやじは
たかがライターいっちょでも伝説を作る神である。

家族で旅行をしていて、片田舎で列車に乗っている時
母と兄が 「あっ!!!」 と、同時に叫んだ。
父は 「なんじゃ?」 と、ふたりの絶叫に驚いている。

母と兄が怒るには、父はタバコに火を点けたあと
それがマッチだと勘違いしてたらしく
列車の窓からライターをポーンと投げ捨てたのだ。

父は 「そうか、わっはっは」 で
ひとり、すべてを完結させ
再び読んでいた新聞を読み始めたが
母はそれが数万円もするライターだったので
半狂乱になっていた。

その後、父には100円ライターが買い与えられたが
父は懲りずにそれを2回
列車の窓から投げ捨ててしまった。
あんたタバコを1本吸うのに一体いくらかけるんだよ!

私はその時は純真な子供だったので
窓からゴミを捨てるのは悪いと言いたかったが
父がライターを投げ捨てる度に
母は数万円のライターを思い出すらしく
どんどん般若のような表情になっていき
そういう状態の女の横で、意見を言えるヤツがいるか?


その父のマッチ投げ捨て癖は
昔、父の命を救った事があるそうだ。
父が地元のおやじ連中と山に
蜂の子を取りに行った時のこと。
(そんなもん取りに行かんでほしいわ・・・)

その山というのは、他県からなめて
ハイキングに来るヤツが多いのだが
地形に変化がない遭難の名所で
毎年、数組はそこで遭難して大騒ぎになっている。

兄もそこで遭難しかけた事がある。
リュックに缶詰などの食料を大量に持っていった兄たちは
途中であまりに重いので
それを一個ずつ投げ捨てて登って行った。
てか、そこまできついのなら、その時点で帰れ!
自然にゴミを散らすな!

ところが、途中で道に迷い、行きも帰りもわからない。
今日はここで野宿して助けを待とうとなった。

そこで腹ごしらえをしようと思ったが
兄のリュックは食料を全部投げ捨てカラだった。
友人たちに分けて貰おうとしたら
ボケのツレは全員ボケ、皆カラだったのだ。

ヘトヘトに疲れてはいるが
若人には何よりもまず食い物。
兄たちは投げ捨てた食料を探し回った。

・・・あんたら、遭難してるんだろ?
何、動き回ってるんだよ、という突っ込みは失敗である。
兄たちは、点々と投げ捨てられている食料を
集め回ってる内に
それがヘンデルとグレーテルの逸話のごとく道案内になり
気付いた時には、山の出口付近までたどり着いていて
遭難せずに済んだ。

もう、物を捨てるな、とか
あんたら結局何しに山に行ったんだ? とか
日帰り登山するのに何でそんなに
大量に食い物を持って行く? とか
山の入り口付近からいきなり挫折して
荷物を捨て始めてるんかよ、とか
私にしてみりゃ突っ込みどころが満載なんだが
この話は何故か村の美談になっているので
やたら批判もできずにいる。


父の方に話を戻すが、父も案の定、遭難した。
親子二代、遭難者かよ、という突っ込みをしないのは
私もお約束通り方向音痴だからである。

だが私が小学生の頃、この遭難親子と裏山に行った時
一休みして帰ろうとなって
しばらくそこで座っていて、「行こうか」 と
ふたり立ち上がり、反対方向へ歩き始めた。

帰るんじゃないのかな、と思ったが
ふたりがあまりに自信たっぷりなので
黙ってついて行ったら
どこに行くのか知らんが、ウロウロウロウロしている。

私は人の心の動きには幼少の頃から鈍感だったので
ふたりがうろたえてるのには、まったく気付かず
いい加減疲れてきたので
「私、先に帰ってるよ」 と、ひとりで歩き出したら
「お、おまえ、道がわかるのか!」
と、ふたりして叫ぶ。

帰宅してふたりが母に 「さっき遭難しかけたぞ」 と
深刻に報告してるのを聞いて
そこで初めて、さっきの状況がこのトボケ親子には
生きるか死ぬかだったのがわかったのであった。

私はこの遭難癖親子の命を救ったわけだが
それに対しての賞賛がまったくないのが不満である。
方向音痴の私は、何故か山では迷わないので
遭難の伝統は受け継いでいない。
しかし、山に一歩入り込むと遭難の危機がつきまとう
環境ってのも問題だよな。


お、いかんいかん、脱線しすぎてるが、父の話ね。
いや、ここまで引っ張るほど凄い話ではないんで
もうやめたいな、と思うんだが、一応書くか。


父はさすがに長く生きてるだけあって兄と違い
気合いの入りまくった本格的な遭難をしていた。
延々と帰路を探して歩き回ったが
あたりは日も暮れて真っ暗になってしまった。
山の夜というのは、マジで真っ暗。
墨で塗りつぶしたように一歩先も見えないのだ。

父は仲間とはぐれて、ひとり山の中をさまよっていたが、疲れて一服しようと
タバコに火を点け、マッチをいつものごとく投げ捨てた。

すると、その火の点いたマッチがスーーーッと
土を通り抜けるように下に吸い込まれて行った。
父は気付いた。 「目の前は谷だ!」

しかし、あたりは真っ暗で
どっちに次の一歩が安全に踏み出せるのかもわからない。
父はそのままそこに腰を下ろした。

朝になって救助隊が発見した父は
崖っぷちで谷底に向いてあぐらをかいて眠りこけてて
朝日を受けたその姿はまるで仙人のようだったと
村で評判になったそうだ。

だーかーらー、遭難だろう? 大迷惑だろう?
何でそれをこう心温まる話に変換するんだよ。

ここで万人が私と同じ感想を持ったことだろう。
「火が点いたままのマッチを投げ捨てるな!」
こいつ、目の前が谷底じゃなければ、山火事を起こして
野鳥やらイノシシやらと一緒に
丸焦げになってたんじゃねえのか?


私はタバコに火を点けたら、手放さず真面目に吸う。
兄もそうだが、ショートピースだからか
一日に吸う本数は少ない。
父はロングピースだが、吸う本数が多い。
あれを “吸う” というならだが・・・。

父はタバコに火を点けて一服吸うと
それを灰皿のふちに置く。
時々忘れて火をつけるらしく、灰皿のふちに
数本火のついたタバコが並んでいる事がよくある。
見てると、吸ってるんじゃなく
タバコを燃やしているだけにしか思えない。

というか、灰皿にぐるりとタバコが並んで
煙をモクモク出してる様子は
あんた、それ何かの宗教的儀式かい、と、言いたくなる。
煙害もはなはだしい。


元夫と実家に行った時、いきなり灰皿の横から
高さ40cmぐらい炎が一瞬出て
その場にいた全員が驚いたことがあった。
火元は100円ライターらしい。

元夫がライターを調べてると
こたつの横で火の点いたタバコが畳を焦がしていた。
つまり、父が灰皿のふちに置いたタバコが
何かの拍子に転がって100円ライターの上に落ち
その火で100円ライターの容器に穴が開き
中のガスが噴出し引火したのであった。

元夫がそれを指摘すると父は
「ライターの事故は危ないのお」 と
呑気に感想を述べていたが
それは “ライター” の事故じゃなく
おめえの過失だろうよ。

父は列車投げ捨て事件以来
重要な会合などで出掛ける時以外は
100円ライターしか使わせて貰ってなかったが
このおやじにゃあ、何を使わせても
ロクな事にならんということだ。


タイトルは、内容とちょっと違うものにして、おしゃれにはずしたつもりだが
どうやら心底ハズシたようなので
「愛煙家だから」 と
とってつけたような理由にしとこう。
(いや、まさにとってつけてるんだが)



これは2004年に書いたもの。
時代は変わり、世間は愛煙家に厳しくなり
さしもの私もとうとうタバコを止めた。

十年一昔と言うけれど
その一昔前に、もっと昔の事を書いてるんだから
違和感バリバリだよねえ。

あ、100円ライターと言えばな
子供が遊ばないように、着火をしにくくしたぞ。
ホームセンターに置いてあったんで試したが
電子式も石式も硬すぎて、私には着火できなかった。
大人の女性にも着けられないって
ちょっとやり過ぎだと思うわ。
ほんと、さっさとタバコを止めといて良かったよー。




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